宇宙終末論


状態方程式がω<-1の場合、とてつもない運命が待っている。

有限時間内にスケール因子aが発散してしまう。つまり空間が裂けてしまう。
宇宙の膨張を加速させるダークエネルギーが強すぎて、重力による構造(銀河とか太陽系)はおろか、電磁気力や核力すら壊されてしまう。

もしω=-3/2程度だとすると、宇宙は後200億年ぐらいで終末を迎える。まず銀河がバラバラになり(終末の6000万年前)、次に太陽系が壊れ(3か月前)、地球も壊れ(30分前)、原子も壊れ(10-19前)、終には空間が引き裂かれて宇宙は完全に終わってしまう。

宇宙終末論(今この瞬間に個人的に命名)にそんな説があったとは。
ダークエネルギーというのが今ひとつピンとこないが、ダークマターが存在することに伴って生ずるエネルギー、みたいな感覚だろうか。

1990年代に行われた銀河や銀河団の観測で、ダークマターをもってしても臨界質量密度の25%しか説明できないことが強く示唆された。

違った。

2003年、「宇宙は全ての物理的構造がバラバラになってしまうビッグリップ (big rip)によって終焉する」という論文が Robert R. Caldwell、Marc Kamionkowski、Nevin N. Weinberg によって Physical Review Letters 誌に掲載された。この仮説では宇宙定数が時間の増加関数になっているため、宇宙の膨張は通常のドジッター宇宙的加速膨張以上のペースで加速される。この強力な加速膨張により、宇宙膨張と切り離されて現在安定に存在している銀河や人間、バクテリア、砂粒に至るありとあらゆる物理的構造がいずれ素粒子にまでバラバラになってしまう。かくして宇宙は、永遠に加速しながらお互いから遠ざかる素粒子だけになってしまうと主張している。

爆発的な膨張加速であらゆるものが破壊される、という現象は直感的にいまいち理解しがたいが、興味深い。
宇宙の最期は大雑把に分けて、熱的死、ビッグクランチ、ビッグリップの3通りが予想されることになるのか。