2010年7月23日(土)午前11時前後に熱海ラブプラスAR撮影旅行中バンキシャに取材された件

前口上

はじめに断っておくと、私自身が撮られた部分は放送には載っていない。よく似通った振る舞いをしている人が映っているカットはある。
次に、この件から既に2週間近くが経過しているのにも関わらず、すべてを記憶に頼って書いているので、会話部分は一部のキーワードをのぞき、すべて捏造である。

  • 捏造ではない確かなキーワード
    • 日本テレビバンキシャ
    • 町興し
    • 熱海は老人の街
    • iPhoneかDS
    • 三人の中で誰が一番好き
    • 凛子は二番目
    • 顔は出ます
    • 2、3秒で切り替わる
    • (放送日は明日なのに明後日と勘違いしている)

ついでに、本来であれば熱海AR撮影日帰り旅行全編の埋め草として使うエピソードの予定だった。しかし今後全編を記述する時間と気力が得られるか不明なので、勢いだけでどうにかなる部分を書き残してしまおうと思い至った次第。
ちなみにこの写真は取材のせいで取り忘れたのを、改めて翌週に補完したもの。

大野屋正門にて

大野屋を出ようとしたとき、突然若い一人の男から声をかけられた。
「すみません。日本テレビバンキシャという番組のものなんですが、今度アニメで町興しという特集をやることになりまして、ラブプラスで町興ししてる熱海を取材していて、それで撮影しているんですが」
Tw*****で事前に情報を得ていたのでそれほど驚きはしなかったが、まさか自分が当事者になるとは思っても見なかった。
「はあ」
「熱海は老人の街になりつつあるのにこうやって若者を集める試みをしていて(以下略)スタンプラリーやってます?」
本心を言えば、無名な一個人にとり百害あって一利無しなテレビの取材などまったくもって願い下げだったが、相手の勢いとこの暑さのせいで取り繕う気力もなく、適当に成り行きに任せてみることにした。
「はい」
iPhoneかDS持ってませんか」
大野屋の門裏に書かれた挨拶文をiPhoneで撮影しようとしていたときに声をかけられたので、バレバレだろうと腹をくくる。
iPhone持ってます」
「ちなみに三人の中で誰が一番好きですか」
「この子です」とスタンプラリーのシートを取り出し、左のキャラを指差した。恋愛シミュレーションのゲームキャラ名を発声する練習はしていなかったので、キャラクターの名前が出てこなかった、というのは今思いついた言い訳。
「凛子ですかあ。聞いた中で一番多いのは愛花でしたね。凛子は二番目ですね」
リップサービスか。いや、キャラ名ちゃんと把握してるんだな、と変なところで感心した。
「それでですね、その辺ぐるーっと歩いてる姿だけでいいんで、撮らせてもらえませんか。撮るだけなんで」
「はあ、まあ、ええ」
「じゃあですね、それ(スタンプラリーのシートとiPhone)を持って」
はっきりと口に出して同意したわけではないが、どうやらOKと受け取ったらしく、撮影指導が始まった。なるほど、こうやって『わかりやすい』映像を撮るのか、と得心がいった。

大野屋前から熱海駅に向かって国道135号線を歩く。
左手にiPhone、右手にスタンプラリーのシートと、大野屋のロビー内購入の、飲み終わっているのについに捨てるタイミングを完全に失った紙パックのジュースを一緒に持ちながら歩く。ハンディカムを持つ男が自分の周りをぐるぐる駆け回っているのを感じるが、レンズに視線をくれたらダメなんだろうなと遠慮してしまい、ひたすらiPhoneの向こう側10m先のアスファルトを見つめながら歩く。
途中、iPhoneとスタンプラリーのシートを同じ手に持つよう矯正される。紙パックのジュースが邪魔でシートがよく見えなかったのか、とちょっと反省する。何に対して反省したのかは自分でも不明。
相変わらず彼はダッシュで飛び回っている。途中、猛烈な勢いで道路の向こう側に渡ったりしていた。危ないなあと思いながら。
「どもありがとうございました。OKです」
「はい」
「えとですね、この特集は明後日の放送で使われますんで」
「え、明後日」
「ハイ日曜日に」
「今日土曜日ですよね。明日じゃ」
「ああああそうですね明日ですね」
「ところでこれって顔、出るんですか」
「あーーーー顔はですね、出ます。出るんですけど、ぱぱぱーっと2、3秒で切り替わっちゃうんで、ええ。ぱぱーっと。それに使わない可能性もあります。何十人と撮ってるんで」
「はあそうなんですか」
「良かったら見てください。日曜日、えーっと明日でしたね」
「ええ」
「それじゃ、どうも暑い中ご苦労様でした」
「はい、どうも」
彼はすたすたと大野屋前へ戻っていった。
たぶんこの映像は十中八九使われないんだろうなと思う。終止消極的な振る舞いがテレビ的に「当たり素材」であるはずがない。
ふとiPhoneの動画撮影機能で彼のことを撮影してやろうと思い立つ。リベンジ(復讐的な意味で)だ、と。
しかし彼の動きは予想以上に早く、カメラを準備しようとする前に次の取材対象候補者からごめんなさいをされていた。その有様になんとなく不憫さを覚えたので結局何も撮れずじまいだった。