緊急地震速報

なんだか変な方向へ来てしまったな、と。
第一に、基本的に、人間自身にはあまり意味のないシステムである。そりゃ10秒あれば机の下に隠れることもできようが、何が起こったのか分からなくてぼんやり、あるいは右往左往している間にカウントアップを迎える可能性のほうが想像しやすい。たとえ敏感に反応できたとしても、そこは自宅ではなくデパートや運転中の車内かもしれない。数百人が瞬間的かつ同時に好き勝手反応しようものなら、それはもう地震の比ではない大パニックが起こる可能性も大いにある。いわば諸刃の剣。
第二に、速報が必要な地域ほど間に合わない可能性が非常に高い問題。単純にいえば、自分の住む地域で直下型地震が起こった場合、震源が十分に深い場合でなければまず間に合わない。裏を返せば、震源から離れていればいるほど速報が十分に機能する。震源から離れれば震度は小さくなるわけで、存在意義自体も急速に薄れる。端から不完全なシステムなのだ。
第三に、恐ろしく不完全な解説がまかり通っているという現状。「大きな揺れが来る前に知らせるシステム」というワンフレーズとっても、というかワンフレーズでまとめようという時点で、義務教育で教わったP波とS波の違いをすっかり忘れてしまった駄目な大人には大いなる誤解を招く羽目になる。これを気に一儲けを考える恥知らずが「地震が来る前に」などと誇大広告を繰り返すたびに、駄目人間たちは勝手に期待感を持って、期待感相応の万単位の金を払ってしまう。テレビやラジオをつけっぱなしにしておけば十分なのに。振り込め詐欺の新ネタありがとう、と件の人たちは大いに喜んでいることであろう。
こと対人に関しては「あれば便利」ではなく、「無いよりマシかも」程度のシステムである。