「えーと、どちら様でしたっけ?」と聞けたらどんなに楽だろう

某駅構内で。
第一声で「誰だか分かる?」と尋ねられたが、顔に見覚えがあるだけで、名前どころかつるんでいた時期すらもまったく思い出せなくて困った。一応の見当はつけてみたのだが、どうにも自信を持てないので、相手から当たり障りなく聞き出してみることに。
3分ほど話してみて、ようやく某氏との関係を思い出した。いや、某氏のこと自体はやっぱりほとんど覚えておらず、今の会話に出てきた共通の知人を元に交遊時期を割り出し、当時の私の人間関係の記憶を引っ張り出してきて、某氏との関係はこうだったはず、という具合に記憶を再構築した、というのが正しいか。
その後もいくつか言葉を交わしたが、某氏に関するエピソードを思い出したわけではないので、会話が膨らむわけもなく、旧交を温める間もなくその場で別れてしまった。それどころか私が自分から相手の名前を呼ばなかったために、某氏自ら名乗らせる流れになってしまい、ほぼ間違いなく「俺忘れられてる」と感づかれてしまっただろう。
今こうして改めて文章化しているうちに、いくつか某氏に直接つながる記憶が浮上してきたが、時すでに遅し。彼には失礼をしてしまった。
顔は分かるが名前は思い出せない古い知人とばったり、というパターンにまさか自分がはまるとは思わなかった。